東京高等裁判所 昭和59年(行ケ)248号 判決
一 請求の原因事実は、すべて当事者間に争いがない。
右争いのない請求の原因三の事実によれば、本件特許発明の特許請求の範囲に「メチル―テトラヒドロ無水フタル酸」と記載されているとした審決の認定は誤りであることに帰し、したがつて、右認定を前提として、特許請求の範囲には発明の詳細な説明に記載した発明の構成に欠くことができない事項が記載されているとはいえず、前記特許法第三六条第五項に規定する要件を満たしていないとして、本件特許は無効にすべきものであるとした審決の判断は誤つており、審決は違法として取消しを免れない。
二 よつて、審決の取消しを求める原告らの本訴請求は理由があるからこれを認容する。
〔編註〕 本件における審決を取り消すべき事由および被告の答弁は左のとおりである。
原告らは、昭和五九年一二月一二日本件特許発明の明細書を訂正することについて審判を請求し、昭和五九年審判第二二五八五号事件として審理された結果、昭和六〇年一二月二六日「特許第五六九二七五号発明明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。」との審決があり、その謄本は昭和六一年二月三日原告らに送達され、右訂正審決は確定した。
訂正明細書に記載された本件特許発明の特許請求の範囲は、「よく知られた方法で4―メチルー⊿4―テトラヒドロ無水フタル酸を異性化することにより作られた、室温で液体である無水物混合物が硬化剤の少なくとも一部分を構成していることから成り、かつ該硬化剤が室温で液体である、エポキシ樹脂と硬化剤としてポリカルボン酸無水物とを含有する新規熱硬化性混合物。」である。
前記訂正審判の審決の確定により、本件特許発明については、その訂正後の明細書により特許出願、出願公告、特許をすべき旨の査定及び特許権の設定の登録がされたものとみなされるから、出願当初から、特許請求の範囲中の化合物は、「メチル―テトラヒドロ無水フタル酸」ではなく、発明の詳細な説明に具体的に開示されている「4―メチルー⊿4―テトラヒドロ無水フタル酸」が記載されていたことになる。
したがつて、特許請求の範囲に「メチル―テトラヒドロ無水フタル酸」と記載されているとした審決の認定は誤りであることに帰し、右認定を前提として、特許請求の範囲には発明の詳細な説明に記載した発明の構成に欠くことができない事項が記載されているとはいえず、昭和六〇年法律第四一号による改正前の特許法第三六条第五項に規定する要件を満たしていないとして、本件特許は無効にすべきものであるとした審判の判断は誤りであつて違法である。
被告の答弁
請求の原因事実は、すべて認める。